コンピュータで作業をしていて,頻繁にキーボードとマウスを持ち替えるのを面倒に感じたことはありませんか?
スマートフォンを操作しながら歩いているのを,危ないと思ったことはありませんか?
我々は,世の中に定着し既に普及している情報機器の入力インタフェースに対して,このような素朴な疑問を持ちました. 現在普及しているコンピュータの入力インタフェースは,文字情報入力用のキーボードと,マウス等のポインティングデバイスがそれぞれ専用に用意されています.一般的なGUI環境での操作には,場所や方向の指示と,文字などの記号情報の入力を併用するため,別々のデバイスではこれらの間を行ったり来たりする必要がありました.
一方,現在主に携帯デバイスで普及が加速しているタッチインタフェースは,キーボードのキーもGUI画面上で仮想化し,両者の機能を統合したものと解釈することもできます.しかし,現在のタッチインタフェースは,物理的キー・ボタン操作には存在した触覚手がかりが失われるため,画面を見て触る位置を確認しながらでないと,操作は困難です.このため,歩きながらの操作は画面の注視が必要で危険であるとともに,視覚障害者にとってタッチインタフェースの普及は改悪とも言えます.
我々は,こうした問題に対して,掌全体の情報を使って上記のような問題に対処する入力インタフェースを考案しました.従来のキーボードやマウスの代替としての使い方は,以下のような感じです.
手を置く面はどのような形状でも構いませんが,使いやすいのは平面よりも半球状だと考えました.こうした発想に基づき,構築したのが右の写真のようなデバイスで,KHAKIと名付けました.名前は,半球状の形状が亀の甲みたいで,担当者が昔飼っていたミドリガメを想像したことに由来します.
KHAKIの特長は,以下の点です.
手と掌全体を使いますので,指先を使えば次のようなことも可能です.
KHAKIの構造を右図に示します.KHAKIは,半透明(すりガラス状)のドームの内側からカメラで手指を観察するという,非常にシンプルな構造です.内側から手指を観察するため,照明を備えています.拡散板は,照明をドーム全体に行き渡らせるために使用します.
内側から照明を当て,手をドームの上に置いて内側からカメラで観察した様子が,右の写真です.ドーム表面に密着している部分が,そうでない部分と比べて白くなっていることがわかります.また,密着している部分の輪郭がシャープなのに対し,浮いている部分の輪郭はぼやけています.この手指画像から,画像処理により各種パラメータを抽出していきます.
モード判別精度,位置精度,外乱耐性などの向上,指先力入力の実装などを行い,改良を続けていきます.また,小型化など,デスクトップスケール以外の実装を検討していきます.