フーリエ級数:正弦波による周期信号の合成

\(\displaystyle x(t) = \sum_{k=1}^N b_k \sin(2\pi kt)\)



\(N=\) 1
目標波形 矩形 のこぎり 三角 最大次数 \(N_{\rm max}\) (10~500)
スペクトル縦軸 線形 dB

説明

周期信号の波形をフーリエ級数展開して,フーリエ係数の振幅を持つ正弦波を重ね合わせます. スライダーを動かし加算の次数を大きくしていくと,元の波形に近づいていく様子が観察されます.

周期 \(T\) の周期信号のフーリエ級数は,
\(\displaystyle\qquad x(t) = \frac{a_0}{2} + \sum_{k=1}^\infty \left( a_k \cos\frac{2\pi kt}{T} + b_k \sin\frac{2\pi kt}{T} \right) \)
と表されます.フーリエ係数 \(a_k, b_k\) は
\(\displaystyle\qquad \begin{eqnarray} a_k &= \frac{2}{T} \int_0^T x(t) \cos\frac{2\pi kt}{T} dt \\ b_k &= \frac{2}{T} \int_0^T x(t) \sin\frac{2\pi kt}{T} dt \\ \end{eqnarray} \)
で算出されます.

本ページにおける信号波形の例は,平均値(直流分)がゼロ,つまり \(a_0=0\) で,周期 \(T=1\) であり,かつ信号が奇関数のため \(a_k=0\) となる場合に相当します.信号波形とフーリエ係数は,以下のようになります.

信号波形 フーリエ係数
矩形波 \(\displaystyle x(t)=\left\{ \begin{array}{cl} 1, & 0 \le t < 1/2 \\ -1, & 1/2 \le t < 1 \end{array} \right. \) \(\displaystyle a_k = 0,\quad b_k = \left\{ \begin{array}{cl} \displaystyle \frac{4}{\pi k}, & k: {\rm 奇数} \\ 0, & k: {\rm 偶数} \end{array} \right. \)
のこぎり波 \(\displaystyle x(t)=\left\{ \begin{array}{cl} 2t, & 0 \le t < 1/2 \\ 2t-2, & 1/2 \le t < 1 \end{array} \right. \) \(\displaystyle a_k = 0,\quad b_k = \frac{2}{\pi k} (-1)^{k-1} \)
三角波 \(\displaystyle x(t)=\left\{ \begin{array}{cl} 4t, & 0 \le t < 1/4 \\ -4t+2, & 1/4 \le t < 3/4 \\ 4t-4, & 3/4 \le t < 1 \end{array} \right. \) \(\displaystyle a_k = 0,\quad b_k = \left\{ \begin{array}{cl} \displaystyle \frac{8}{(\pi k)^2} (-1)^{(k-1)/2}, & k: {\rm 奇数} \\ 0, & k: {\rm 偶数} \end{array} \right. \)

つまり,のこぎり波の場合,\(k\) 次高調波(倍音)成分が,基本周波数成分の \(1/k\) 倍の振幅で含まれます. 矩形波の場合,偶数次高調波(倍音)成分が存在せず,奇数次成分のみが基本周波数成分の \(1/k\) 倍の振幅で含まれます. 三角波の場合,矩形波と同様偶数次高調波(倍音)成分が存在せず,奇数次成分のみが基本周波数成分の \(1/k^2\) 倍の振幅で含まれます.

のこぎり波はすべての倍音成分が含まれますのでスライダーを1つ動かすごとに合成波形が変化し,矩形波と三角波の場合はスライダーを動かすと1つおきに変化する様子が確認できます.矩形波と三角波がこのように類似した周波数成分を持ち,三角波の振幅比率が矩形波の振幅比率の2乗になっている理由は,三角波が同じ矩形波同士の畳み込み波形であるためです.これは,フーリエ級数・フーリエ変換において,時間領域の畳み込みが周波数領域での積になる性質によります.

また,矩形波やのこぎり波のように不連続な波形では,正弦波加算の次数を大きくしても有限次数の加算である限り不連続部分に突起とぎざぎざが残ります.最大次数(初期値 \(N_{\rm max}=50\))まで加算しても目標波形との差が目立ち,この範囲では突起の高さにあまり変化が見られない様子が観察されます.これを,Gibbs現象といいます.

Gibss現象については,「フーリエ級数におけるGibbs現象と周波数領域での窓関数」で補足します.


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作成:2022年4月1日