HMD使用時の遅延による世界揺れ


表示図形 箱形 扇形 頭部回転
遅延 0 ms
頭部回転角 \(\pm\) 0 deg.
動作時間 0 s
休止時間 0 s
時間倍率 1

[Japanese / English]

HMD装着時に頭部運動から描画までの遅延が存在すると観察される「世界揺れ」の説明です.

この図はTop Viewで,ウィンドウの上側が正面方向です.ウィンドウ下部にある逆T字印はユーザーの頭部方向を示しています.そのとき,バーチャル世界がどの方向に描画されるかを,メッシュの動きで示しています.ユーザー頭部は,正面からの角度が正弦波,すなわち
\(\qquad\theta(t) = \pm A \sin \pi (t/T-1/2)\)
という動きを行うものとします.ただし,\(A\) は左右の首振り角度,\(t\) は動き始めてからの時間,\(T\) は,左端から右端,もしくは右端から左端まで頭部を振るのにかかる時間です.

動き始めで世界が頭部にくっついて回り,運動中は世界の動きがほぼ止まりますが,頭部の動きを止めるときには世界が逆方向に回る様子が確認できます.60 fps で描画しているときに1フレーム (約17 ms) 程度の遅れがあるだけで,世界揺れは無視できないものになります.遅延が大きくなると,揺れはますますひどくなります.このことから,HMDシステムにおける遅延抑制(遅延補償)の重要性が理解できると思います.HMDシステムにおける遅延の影響はVRの黎明期である1990年頃から言及されており,2000年頃から有効な遅延補償の解決策が提案・実装されています.現在市販されているほぼすべてのHMDシステムは,何らかの手段で遅延補償を行っていると思ってよいでしょう.

完全没入型VRでは実世界が隠されるため遅延による世界揺れは比較的目立ちにくいですが,特に光学シースルーHMDを使ったAugmented Realityでは,実物体とCG物体とずれが直接視認されるため,徹底的な遅延補償が必要です.


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作成:2020年6月3日