SICE SI2000

VR工学部会担当 オーガナイズドセッション報告



OS: ヒューマンセンタードVRシステム


報告者:横小路泰義(京都大学)

本セッションは,名工大の佐野明人氏がオーガナイズしたセッションであり8件 の発表があった.

京大の堀口氏らの研究は,人間が直接知覚出来ない遠隔事象の知覚モデルである レンズモデルを拡張し,これをロボットの遠隔操作環境設計に応用して操作者と 遠隔地の自律ロボット間の円滑な協調が可能な環境構築を目指している.遠隔操 縦システム設計の新しい切り口であり,今後の発展が期待される.

山形大の羅氏らは,遠隔操縦システムの中の視覚システムに着目し,オペレータ の頭部の動きをもとに遠隔ロボットのカメラヘッドを制御する系にH無限大制御 理論を適用し,オペレータ自身が遠隔地からの映像中のターゲットをトラッキン グする特性の個人差や変動にロバストな制御系を設計した.

名工大の佐野氏らは,倒立振子を例にとり,人間が自身の持つモータスキルを発 現している際に,対象をどのように知覚しているかを視覚条件を様々に変化させ ることによって調べた.今後のモータスキルの伝達手法の開発に向けての基礎的 な研究と捉えることができよう.

東京大学の柳田らは,HMDによる映像提示において使用者の頭部運動に起因する 映像の遅れと複雑なCG描画に起因するフレームレートの低下による違和感が簡単 な画像シフトでかなり低減できることを示した.今後の具体的な実装システムで のデモンストレーションに期待したい.

先述の佐野は,マイクロテレオペレーションにおける位置と力のスケーリングの 大きさは,個人の好みにより変化しうることを指摘し,実際に幾つかの実験例を 示した.いわゆるスケール則から導かれるスケーリングとは幾分異なった大きさ を人間は選ぶという結果が興味深い.

立命館の平井らは,食品や生体組織などのように力を加えて変形した後その変形 が完全にもとに戻らない特性をもつ物体(レオロジー物体)のモデル化手法を検 討した.比較的簡単なモデルではあるが,実際の変形をある程度模擬できている ようであった.

東大の山本らは,薄型静電アクチュエータを用いた低コストで軽量な触覚インタ フェースを開発した.この装置はフィルムの上に櫛状の電極を配した構造であり, フレキシブルで軽量であることからこれまでにない様々な応用が期待できそうで ある.

最後に,京大の横小路らは遭遇型と呼ばれる方式のハプティックデバイスを用い て乗用車の内装デザイン用の仮想操作パネルを試作した.ハプティックデバイス の実用例はまだまだ少ないが,このような例が突破口となることを期待したい.

以上のように,本セッションでは遠隔操縦やVRシステムなど,常に人間が中心と なるシステムにおける様々な側面での研究が発表され,それぞれ活発な意見交換 がなされた.


OS: ネットワーク型VRシステム (1) (2)


報告者:西山高史(松下電工)

本セッションは全部で10件の発表があり、5件づつ前半、後半の2回に分けて構成された。

前半の内2件は、コミュニケーションを活性化させるために仮想空間に「場」の考え方を導入したもので、身体表現に関する研究(上杉ら)とユーザの生理情報に基づいて表情が変化するメディアロボットに関する研究(石引ら)である。また片井らは、ユニバーサルデザイン支援のために、設計者が仮想空間内で例えば身体障害者のような感覚で対象を操作体験するシステムについて講演した。柴野らは、ユーザがネットワークを介して遠隔の見本市会場にアクセスできるシステム、さらに山本らは情報リンクを用いたネットワーク型仮想環境システムの構想と実装上での同期管理の問題について講演を行った。

後半では、安田らの開発したビデオ映像から自動的に3次元モデルを構成できる Virtual GAIA システムの講演に続いて、テレオペレーションシステム関連が4件あった。松原らは筆者らがこれまで開発したISDNベースの遠隔操作システムに、エフェクタを搭載した半自律型ロボットを組み合わせたシステムについて紹介した。神徳らは、筆者らが実際に行った遠隔協調作業実験をもとに、そこでの共通課題を整理、明確にした。登尾らはテレオペレーションシステムにおいて、実空間とコンフィギュレーション空間におけるユーザの操作性について言及、比較を行った。さらに高階らは、筆者らがこれまでに提案している、ロボット、画像処理、ネットワーク、GUIを統合したロボット操作システム VISITの構成要素のうち、操作者に代わってロボットの作業手順を生成するモジュールについて講演を行った。


報告者:松丸隆文(静岡大学)

この技術分野にはさまざまな豊富な技術課題があり, 発表はそれぞれが進行中のファッショナブルなトピックであった. 他のセッションに比べて,参加者が多く,興味ある技術分野であることが再確認された.

質疑も活発で,司会者自らが用意した質問をする余裕もないほど. またセッション終了後に個別に質問したり,数人が集まって討論したりなどの風景が見られた.

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Yasuyuki YANAGIDA <yanagida@star.t.u-tokyo.ac.jp>